第五章

材料へのこだわり

第二節木曽檜にまつわる苦い思い出、
誇らしい思い出

先代の忠治が店を継ぎ、初めて木曽檜の仕入れに行った時の話。もともと刳物職人として木を扱っていた忠治でしたが、檜を仕入れた経験はありませんでした。当時は貯木場の水に浮かべられた丸太を見て買い付ける方法。木は節があると他の部分よりも比重が大きいため、水に入れると節の多い面が下を向き、きれいな面が上に出ます。忠治は「あれもいいし、これもいいな」と嬉々として買い付けて来たものの、後日、運ばれた丸太を見て、「何でこんなに節があるんや」と落胆したと言います。今では懐かしい失敗談です。
こんな話もあります。現在の本店の、一つ前の店を建てるとき、ショーウィンドウを木曽檜造りにしようということになりました。ところが、地元の工務店が必要なだけの量を揃えられず、「木曽檜をよく使っている宮忠さんで用意してください」と言われたのです。希少な木曽檜に、私たちがいかにこだわってきたかを物語る出来事です。

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