第三章

本物へのこだわり

第三節質にこだわった宮造りへの回帰と、
個人客向け販売の本格化

毎月1000というペースでの宮造りは2年ほど続いたものの、3年目頃からは次第に落ち着いていきました。そして1985(昭和60)年を迎える頃には、以前のようなおだやかなペースで、品質の高い宮造りに力を注げる状態が戻りました。通信販売で知名度が上がったことによって、ビルの屋上や工場の一隅に建てる「別注品」のお宮の製作依頼も増えてきました。

ここで治正は、問屋への卸販売からの脱却を考え始めます。苦労して開拓した販売先でしたが、問屋の販売ルートに商品を乗せてもらうということは、宮忠の考え方では売れないということでもあります。問屋は、「ちょっとでも安くていいもの」を求め、同じ品質なら今年よりも来年は安くと、どんどんコストダウンを要求されます。それに対応するには材料のランクを下げなければならず、宮忠のめざす宮造りとはほど遠いものとなってしまいます。

そこでこの時期からカタログを制作。1986(昭和61)年には本店の店舗部分を改築し、スペースを拡張して、店頭に商品を豊富に展示。個人のお客様向けの直接販売に、それまで以上に力を入れ始めたのです。

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