第六章

伝統の継承

第一節粋な宮師が伝えてくれた技

宮造りの技は、元をたどれば、神社を建築する「宮大工」が持っていた技です。宮忠では、最初に入ってくれた職人さんが持ち込んでくれたり、専務・喜久治が修行先の京都で身につけてきたものが受け継がれています。喜久治は修業時代をこう振り返ります。
「親方から教えてもらったようにつくって、2回目もそのようにやろうとすると、頭を叩かれて、『何しとるんや、これはこうしないかん』と言われる。それで3回目は、どっちのやり方かなあと迷っていると、また叱られて、『これはこうしないかんのや』と別のやり方を言う。当時は、何でそんな意地悪するんやろと思ったけど、後々考えると、いろんなやり方を教えてくれたんです。外にお祀りするお宮は、あまり細かく細工をすると早く傷む、腐る。だから材料を太く残しておかなきゃいかん。本当にいいものが欲しいと注文してくださった高価なもので、家の中にお祀りするなら、精巧にしないといけないんです」。
親方から教わったのは、一つひとつ違う、神棚造りの奥深さ。
「年配の職人さんは、芸達者な人も多かった。仕事しながら都々逸を歌ったりね」と、粋な人柄を懐かしみます。

宮忠の歴史一覧に戻る