第三章

本物へのこだわり

第四節おかげ横丁という新たな販路

1990(平成2)年、忠治に代わり、治正が三代目社長に就任しました。
1993(平成5)年、伊勢に「おかげ横丁」ができる――そんな情報を耳にした治正は、「宮忠こそ出店すべき」と、オーナーのもとへ交渉に行き、快諾を得ます。国内外から大勢の人が訪れるこの店舗が、後に宮忠を広くアピールする窓口となっていきます。
当初、この店舗の品揃えは、本店と同じ神棚や神具でした。
しかし、おかげ横丁を訪れる観光客が求めるのは、ちょっとしたお土産品。そこで現専務の喜久治は、宮師のすぐれた技を活かした、一般の人が興味を持つ新商品づくりの試行錯誤に乗り出します。

最大のヒントとなったのが、店頭でお客様から寄せられる「こんなものが欲しい」という声でした。時は風水ブーム。「ラッキーカラーの盛り塩用のお皿」「盛り塩固め器」などは、そのような声に応えて生まれたものです。また、人気商品となった「火打石セット」は、宮忠が考案して発信した商品。以前から神具として取り扱っていた火打石を、一般の人が使うお清め用として考案したものです。ほかに神棚用の檜の端材を利用した「檜風呂ック(ひのきぶろっく)」などのヒット商品もあれば、その陰にはペーパーウェイトなどあまり支持を得られなかった商品もあります。
これらの商品は、「伊勢の神棚屋さんの、御利益がある商品」とお客様から喜ばれ、店舗も大勢の人で賑わうようになりました。現在では、商品群はさらに多彩になりましたが、「宮師の技を使っていいものをつくる」というこだわりには変わりがありません。

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